(1)最初の殺人者カイン
(2)セツの誕生
(3)エノシュの誕生
(4)堕天使と人間の娘の雑婚

1 カインとアベルについて学ぶ。

Ⅰ.最初の殺人者カイン  
1.女から誕生する人物の誰かが、「女の子孫」であり贖い主である。
1)サタンは「女の子孫」の出現を大いに恐れた。①その人物が現れたなら、サタンの野望は打ち砕かれてしまう。②そこでサタンは、女から誕生する人物の抹殺を計画した。旧約聖書は、サタンによるメシア到来の妨害の記録として読める

(2)アダムとエバに2人の息子が与えられた。①カインとアベルがそれである。②成長するに従って、2人の性質が明らかになってきた。*兄のカインは、神に対して反抗的な性質を持っていた。*弟のアベルは、神を慕い求める性質を持っていた。③アダムとエバは、アベルこそ「女の子孫」だと思ったことだろう。

2.サタンは「女の子孫」を抹殺するために行動を起こした。①サタンは、アベルは「女の子孫」そのものではないかと考えた。②あるいは、「女の子孫」を輩出する家系に連なる人物ではないかと考えた。③そこでサタンは、神に反抗的なカインを用いてアベルを抹殺しようとした。⑤ヨハネの福音書8章44節Joh 8:44
あなたがたは、悪魔である父から出た者であって、あなたがたの父の欲望を成し遂げたいと思っています。悪魔は初めから人殺しで、真理に立っていません。彼のうちには真理がないからです。悪魔は、偽りを言うとき、自分の本性から話します。なぜなら彼は偽り者、また偽りの父だからです。

3.カインとアベルの対比(創4章)
(1)共通点 ①彼らはともに罪人であった。②ともに、人類の堕落後、エデンの園の外で生まれた。③ともに同じ両親から生まれ、同じ環境で育てられた。
(2)相違点①カインのささげ物は、信仰によるものではなかった。②アベルのささげ物は、血のささげ物であった。③「しばらく時が過ぎて」(創4:3)とある。
*その間、人口が増加した。*神からささげ物に関する啓示があった。*アベルのささげ物は、この啓示に応答する信仰に基づいたもの。
(3)創世記4章の段階で、人間の前には2つの道が開けていたことが分かる。①カインの道(神に反抗する道)とアベルの道(神に従う道)    (4)最初の殺人①カインは、アベルを人目につかない所に誘い、そこで彼を殺した。②これは、人類史上最初の殺人であり、兄弟殺しである。③新約聖書では、アベルの死は「義人の死」と解説されている。*マタ23:35、ルカ11:51、1ヨハ3:12④神はカインに、「あなたの弟アベルは、どこにいるのか」と問われた。*これは、罪の告白を導き出すための質問である。⑤カインは、「私は知りません」と答えた。*これは、人間が嘘をついた最初の事例である。⑥カインは、「私は弟の番人なのでしょうか」と応じた。*彼は、神の質問は的を射たものではないと反論している。
(5)サタンは、アベル殺害によって、「女の子孫」の到来を阻止しようとした。①それに対する神からの対抗策は、セツの誕生である。

Ⅱ.セツの誕生

1.創世記4章25節Gen 4:25
アダムは再び妻を知った。彼女は男の子を産み、その子をセツと名づけた。カインがアベルを殺したので、彼女は「神が、アベルの代わりに別の子孫を私に授けてくださいました」と言った。    (1)セツは、アベルの代わりとしてアダムとエバに与えられた息子である。①セツには、「定める」、「土台」などの意味がある。②アダムとエバは、セツからメシアを輩出する家系が始まると考えた。③「別の子孫」は、ヘブル語では「別の種」ということばである。*「種(ゼラー)」は「女の子孫」の「子孫」と同じことばである。    (2)この段階でのエバの理解①アベルに代わる息子が与えられた。②その息子は、「女の子孫」を輩出する家系の始まりとなる。③エバは霊的に成長し、神の計画をより深く理解するようになっていた。

Ⅲ.エノシュの誕生  
1.創世記4章26節Gen 4:26 セツにもまた、男の子が生まれた。セツは彼の名をエノシュと呼んだ。そのころ、人々は【主】の名を呼ぶことを始めた。    (1)セツにも男の子が生まれた。彼はその子をエノシュと名づけた。①エノシュには、「朽ちる人」という意味がある。②セツは、人間存在のはかなさや限界を理解した人であった。詩篇103篇15節Psa 103:15 人 その一生は草のよう。/人は咲く。野の花のように。
(2)そのころ、人々は【主】の名を呼ぶことを始めた。①これは、定期的な公の礼拝が始まったという意味である。②セツの家系に属する人たちの中に、霊的覚醒が起こったことが分かる。③これは、サタンにとっては歓迎できない状況であった。

Ⅳ.堕天使と人間の娘の雑婚
1.別の戦略
(1)「女の子孫」を輩出する人物を殺しても、神は代わりの人物を立てるだろう。①この戦略は無効なので、新しい戦略を考える必要がある。②新しい戦略とは、神に反抗的なカインの子孫たちを大いに増すこと。③彼らを通して、セツの子孫たちに悪影響を与えること。
2)創世記4章16~22節Gen 4:16 カインは【主】の前から出て行って、エデンの東、ノデの地に住んだ。Gen 4:17 カインはその妻を知った。彼女は身ごもってエノクを産んだ。カインは町を建てていたので、息子の名にちなんで、その町をエノクと名づけた。Gen 4:18 エノクにはイラデが生まれた。イラデはメフヤエルを生み、メフヤエルはメトシャエルを生み、メトシャエルはレメクを生んだ。Gen 4:19 レメクは二人の妻を迎えた。一人の名はアダ、もう一人の名はツィラであった。Gen 4:20 アダはヤバルを産んだ。ヤバルは天幕に住む者、家畜を飼う者の先祖となった。Gen 4:21 その弟の名はユバルであった。彼は竪琴と笛を奏でるすべての者の先祖となった。Gen 4:22 一方、ツィラはトバル・カインを産んだ。彼は青銅と鉄のあらゆる道具を造る者であった。トバル・カインの妹はナアマであった。      ①カインの子孫たちは、先進的な文明を築き始めた。②その文明は、神に敵対的であり、一夫多妻と暴力を特徴としていた。
(3)創世記4章23~24節Gen 4:23
レメクは妻たちに言った。/「アダとツィラよ、私の声を聞け。/レメクの妻たちよ、私の言うことに耳を傾けよ。/私は一人の男を、私が受ける傷のために殺す。/一人の子どもを、私が受ける打ち傷のために。Gen 4:24 カインに七倍の復讐があるなら、/レメクには七十七倍。」 ①アダムから7代目のレメクは、神に敵対的な文明の化身のような人物。彼は、人類史上初めて、ふたりの妻をめとった。③妻の名は、アダ(装飾、飾るなどの意)とツィラ(きらきら輝くの意)。*ともに、性的快楽を示唆した名前である。④またレメクは、暴力的な人物であった。
(5)カインの子孫との交流により、セツの子孫の中に背教が広がっていった。①これは由々しき事態であるが、サタンはさらに強烈な手を打った。②それが、堕天使と人間の女の雑婚である。

2.堕天使と人間の女との雑婚
(1)創世記6章1~2節Gen 6:1 さて、人が大地の面に増え始め、娘たちが彼らに生まれたとき、Gen 6:2 神の子らは、人の娘たちが美しいのを見て、それぞれ自分が選んだ者を妻とした。①これは、堕天使と人間の娘の雑婚の記録である。②「神の子ら」(ベネイ・ハエロヒム)ということば*ヘブル語聖書では、常に天使を指す(良い天使も堕天使も指す)。*ヨブ1:6、2:1、38:7参照③新約聖書では、「神の子」は天使以外のものも指す。*アダムや信者*イエス・キリストもまた「神の子」である。*イエスの場合は「そのひとり子」と呼ばれる。*それは、イエスが永遠に存在していることを示している。④堕天使と人間の娘の雑婚という解釈は、昔からあるユダヤ人の解釈である。⑤ユダヤ人の歴史家ヨセフスの「ユダヤ古代史」(紀元173年)*「神の子ら」(ベネイ・ハエロヒム)を「天使」と解釈している。⑥「人の娘たち」とは、人間の女のことである。*この中には、カインの系列の女も、セツの系列の女も含まれている。⑦堕天使たちは、「それぞれ自分が選んだ者を妻とした」。*これは、堕天使と人間の雑婚を表している。

(2)なぜサタンは、堕天使と人間の女の雑婚という策略を採用したのか。①人間の女の中にある「神のかたち」を破壊するためである。②異常な人間を誕生させ、「女の子孫」の誕生を妨害しようとした。

結論

1.サタンは、アベルを殺し、「女の子孫」の家系を断ち切ろうとした。
2.しかし神は、アベルに代わる人物として、セツを誕生させた。
3.セツにエノシュという息子が誕生した。
4.セツ-エノシュという家系は、霊的覚醒を体験する信仰者の家系である。
5.カインの子孫は、神に敵対する文明を築いていった。
6.サタンは、人間の「かたち」を歪めるために、堕天使を人間の娘の雑婚を推進した。
7.これは「女の子孫」の誕生を阻止するためにサタンの策略である。
}8.それに対する神の対抗策は、地球を覆う大洪水である。

2, 大洪水に学ぶ(5)

(1)人の悪の増大
(2)箱舟の建造
(3)大洪水
(4)神の守り

Ⅰ.人の悪の増大

1.大洪水が起る直前の地上の状態は、どのようなものであったか。

(1)創6:5Gen 6:5 【主】は、地上に人の悪が増大し、その心に図ることがみな、いつも悪に傾くのをご覧になった。

(2)創6:11~12Gen 6:11 地は神の前に堕落し、地は暴虐で満ちていた。Gen 6:12 神が地をご覧になると、見よ、それは堕落していた。すべての肉なるものが、地上で自分の道を乱していたからである。

2.サタンは、セツの家系から「女の子孫」が誕生することを阻止しようとした。

(1)カインの家系とセツの家系を接触させる。①セツの家系に悪影響を与え、その信仰を破壊する。

(2)堕天使たちに人間の女たちと結婚させる。①人間の女には、カインの家系もセツの家系も含まれる。 ②この雑婚の目的は、異常な人間を誕生させることである。③その結果、「ネフィリム」と呼ばれる存在が誕生した。
(3)マタ22:30から、天使は結婚するのかという疑問が生じる。Mat 22:30 復活の時には人はめとることも嫁ぐこともなく、天の御使いたちのようです。①この聖句は、良い天使たちの関するものである。②堕天使たち(悪霊たち)は、人の娘と結婚する。

3.人類が堕落して行くのを見て、神は大いに悲しまれた。
(1)創6:6~7Gen 6:6 それで【主】は、地上に人を造ったことを悔やみ、心を痛められた。

Gen 6:7そして【主】は言われた。「わたしが創造した人を地の面から消し去ろう。人をはじめ、家畜や這うもの、空の鳥に至るまで。わたしは、これらを造ったことを悔やむ。」①神は、人類を破滅から救おうとされた。

Ⅱ.箱舟の建造

1.神は、サタンの悪影響を受けない1人の信仰者を残しておられた。

(1)ノアは、セツの家系に属する人物である。①彼は、時代の圧力(この世の価値観)に抗し、神に従順な生活を続けた。   ②神は、ノアと3人の息子たちを通して新しい人類の歴史を作ろうとされた。

2.ノアの時代に大洪水が襲った理由が、2つ考えられる。
(1)人類の罪を裁くための方法として、洪水が用いられた。①この洪水は、局地的なものではなく、地球全体を覆うものである。
(2)ノアとその一家が悪影響を受ける前に、罪人たちを地上から取り去るため。①「女の子孫」の家系をサタンの攻撃から守るための反撃策である。

3.神はノアに、箱舟を造るように命じた。
(1)箱舟は、原語では「テイバー」である。①これは、、ヘブル語ではなく、エジプト語から借用したものである。 ②その意味は、船ではなく、箱である。 ③赤子のモーセが入れられた籠もまた「テイバー」である。 ④ノアの箱舟と、モーセの籠には、類似点がある。⑤溺死から守られた者には、他の人に救いをもたらす使命がある。 ⑥モーセは、イスラエルに解放をもたらすために救われた。 ⑦ノアもまた、人類に救いをもたらすために救われたのである。
(2)箱舟のサイズ①長さが300キュビト(135m)②幅が50キュビト(22.5m) ③高さが30キュビト(13.5m) ④広さに換算すると、135×22.5=3,037.5㎡、およそ920坪。⑤3階建てなので、総床面積は2,760坪にもなる。 ⑥船のサイズに換算すると、排水トン数4万3,000トンになる。 ⑦米国の鉄道で使用している家畜運搬車両550両に匹敵するサイズである。 ⑧羊なら、この箱舟に13万頭も入れることができる。⑨種類が知られている動物たちをすべて入れたとしても、3万5千~7万頭。  ⑩この箱舟は、航行することではなく、浮ぶことだけが目的の建造物である。  ⑪この構造なら、仮に90度近く傾いたとしても、元に戻る。

(3)神から、すべての動物を2匹ずつ入れるようにという命令が下った。 ①鳥、動物、地をはうものが、種類に従って、集められた。 ②神が超自然的に働かれたので、動物たちは自分からノアのところに来た。 ③箱舟に入った動物が7万5,000種類いたとしても、60%しか埋まらない。④40%のスペースは、昆虫、食物、居住空間などのために用いることができる。

(4)最後に、ノアと3人の息子たちが箱舟に入った。 ①それぞれに妻がいたので、合計8人である。

Ⅲ.大洪水

1.神からの語りかけがあってから7日後に雨が降り始めた(7日間の準備期間)。

(1)これは、人類史上初めての雨である。 ①この雨の目的は、すべての生き物を地の面から消し去るためであった。②雨は、40日40夜降り続けた。

2.この洪水は、ある地域だけを襲ったものではない。
(1)もしそうなら、人間も動物も、高い地域に避難できたはずである。①もしこれが地域的な洪水なら、大規模な箱舟を造る必要はなかった。②また、あらゆる種類の動物を集める必要もなかった。(2)水が引くまでに要した時間を考えても、これは普遍的な洪水である。①水は、150日間、地の上に増え続けた。②また、地が乾くまでにさらに221日かかった。
3)神は、2度と洪水をもたらさないと約束されたが、地域的な洪水は今も起こっている。①普遍的な洪水を前提にしなければ、神の約束は成就していないことになる。 ②現在の人類は、ノアの3人の息子から出ている。③これもまた、普遍的洪水を前提とした説明である。

Ⅳ.神の守り

1.大洪水が襲って来ても、箱舟の中だけは安全であった。

(1)箱舟の中が安全だった理由は、創8:1に出て来る。Gen 8:1
神は、ノアと、彼とともに箱舟の中にいた、すべての獣およびすべての家畜を覚えておられた。神は地の上に風を吹き渡らせた。すると水は引き始めた。  ①「覚えておられた」とは、単に「忘れていない」ということではない。  ②これは、心に留めている対象に対する「行動」を指すことばである。  ③神は、箱舟の中の人間と動物を守るために、行動を起こされたということ。  ④さらにこのことばは、契約関係を前提として語られることばである。

(2)ノア契約はまだ結ばれていないが、その預言は創6:18で与えられていた。Gen 6:18 しかし、わたしはあなたと契約を結ぶ。あなたは、息子たち、妻、それに息子たちの妻とともに箱舟に入りなさい。

(3)箱舟は、アララテ山の上に留まった。①つまり、水位が相当下がったということである。②アララテ山の標高は、5,000メートル以上もある。③箱舟は、山の頂上ではなく、山麓のどこかに留まったのであろう。

(4)いよいよ、ノアと3人の息子たちから新しい人類の歴史が始まる。 ①「女の子孫」の誕生を妨害しようとしたサタンの策略は、再び神によって粉砕されたのだ。

大洪水後の世界について学ぶ。

バベルの塔(6)

(1)大洪水後の人類の反抗

4.アウトライン

(1)ノア契約

(2)ノアの3人の息子たち

(3)バベルの塔事件

Ⅰ.ノア契約  
1.大洪水後、新しい人類の歴史が始まる。
(1)大洪水によって、悪魔の国に属する人々は、全員滅びた①彼らは、箱舟に入らなかった人々である。

(2)神は、ノアの家族8人から新しい人類の歴史を作ろうとされた。①ノアと3人の息子たち、それぞれの妻、合計8人。②人類にやり直しのチャンスが与えられた。③箱舟から出たノアは、家族を【主】への礼拝へと導いた(創8:20)。Gen 8:20
ノアは【主】のために祭壇を築き、すべてのきよい家畜から、また、すべてのきよい鳥からいくつかを取って、祭壇の上で全焼のささげ物を献げた。

2.洪水後に神がノアと結んだ契約を、ノア契約と言う(創9:1~17)。

(1)ノア契約では、ノアは第2のアダムとしての位置づけにある。①アダムから人類の歴史が始まった。②洪水後は、ノアから人類の歴史が始まる。

(2)神は、ノアとその息子たちに、「生めよ。増えよ。地に満ちよ」と言われた。①アダムに与えられた命令(エデン契約)と同じものである(創1:28)。Gen 1:28
神は彼らを祝福された。神は彼らに仰せられた。「生めよ。増えよ。地に満ちよ。地を従えよ。海の魚、空の鳥、地の上を這うすべての生き物を支配せよ。」

(3)特筆すべきは、死刑制度の創設である(創9:6)。Gen 9:6 人の血を流す者は、/人によって血を流される。/神は人を神のかたちとして/造ったからである。①神は、カインを放置したことが人類に悪影響を与えたと判断された。 ②死刑を認める理由は、「神のかたち」に造られた人間を殺すことは、重罪に 当たるからである。③合法的に死刑を執行するためには、人間政府の存在が必要となる。  ④死刑制度と人間政府は、人類の堕落傾向に歯止めをかけるための神の方法。⑤また、悪魔の国が広がることを阻止するための神の新しい戦略である。  ⑥この点を、パウロはロマ書13章で論じている(ロマ13:1~6参照)。

(4)ノア契約のしるしは、虹である(創9:8~17)。 ①虹は、英語では「レインボウ」で、直訳すると、「雨の弓」となる。②ヘブル語で虹のこと「ケシェット」と言う。③戦いのための弓(武器)を指すことばで、英語の「レインボウ」と似ている。④虹を見たのは、人類の歴史上ノアが最初である。⑤彼は、雲の中に出ている虹を見て、神の契約が真実であることを確認した。⑥虹は、「神が戦いの弓を雲の中に置き、それを平和のしるしとされた」ということを象徴している。⑦ノア契約は、今も有効である(無条件契約。破棄されることなく続いている)。⑧虹が示していること *神は真実なお方である。*人類を滅亡させるような地球規模の大洪水は起こらない。

Ⅱ.ノアの3人の息子たち  
1.全人類は、ノアの3人の息子たちから地上に拡がることになった。

(1)彼らの名前は、誕生順に、セム、ハム、ヤフェテと言う。

(2)ある時ノアは、3人の息子たちの将来について預言を語った(創9:25~27)。Gen 9:25 彼は言った。/「カナンはのろわれよ。/兄たちの、しもべのしもべとなるように。」Gen 9:26 また言った。/「ほむべきかな、セムの神、【主】。/カナンは彼らのしもべとなるように。Gen 9:27 神がヤフェテを広げ、/彼がセムの天幕に住むようになれ。/カナンは彼らのしもべとなるように。」  ①最も祝福されているのは、セムである。  ②これは、女の子孫(メシア)がセムの家系から出ることを示唆している。  ③これは、悪魔にとっては、聞き捨てならない重要な情報である。④女の子孫は、ノア→セム→アルパクシャデ→シェラフ→エバル(ヘブル人の父祖)→ペレグ→レウ→セルグ→ナホル→テラ→アブラムという家系から出て来る。

2.人類史のこの段階では、全人類は同じルーツを持っていた。

(1)世界の現状は、「人類の調和」より「民族間の対立」の方がより顕著である。

(2)なぜ地上には、さまざまな言語があり、さまざまな民族が存在しているのか。

(3)その原因は、「バベルの塔事件」にある。

Ⅲ.バベルの塔事件

1.この事件の本質は、ニムロデが指導者となって起した神への反抗である。

(1)ノア契約の中で神は、全地に拡がるように命じておられた。

(2)人々はその命令に反して、同じ場所に集まって住むようになった。 ①悪魔の視点からは、人間が一箇所に集まっている方が管理し易い。②また、悪の影響も短時間で拡散する。

(3)人々は、アララテ地方(アルメニアとトルコ)からシヌアルの地へ移動した。①シヌアルの地とは、バビロンのことである。②彼らは、耕作に適した地を見つけ、そこに定住した。③全人類は同一言語を用いていた。④大プロジェクトを容易に実行することができた。⑤シヌアルの地に定住した人々は、レンガを作って、建材として利用した。⑥さらに、モルタルの代わりに瀝青(アスファルト)を用いるようになった。

(4)しばらくすると、彼らはこう言い始めた(創11:4)。Gen 11:4
彼らは言った。「さあ、われわれは自分たちのために、町と、頂が天に届く塔を建てて、名をあげよう。われわれが地の全面に散らされるといけないから。」①バベルということばの意味は、「神の門」である。 ②「天に届く塔」を建てようとした理由は、占星術を行うためである。*彼らは、神の領域に届こうとしたのである。*ここには、誤った宗教の原型がある。③この塔は、新しい宗教を創設する目的で建てられたものである。④その指導者であるニムロデは、バビロンの主神であるマルドゥクになった。*マルドゥクは、メロダクやベルと呼ばれている(エレ50:2)。⑤人々は、「名をあげよう」という野望を抱いた。⑥野望は、人間中心主義、傲慢、プライドなどから出てくる根本的な罪である。

⑦人々が塔を建てた理由は、神が与える領土区分を拒絶し、自らの計画でそれを選ぼうとしたことにある。

2.神の裁き

(1)創11:5Gen 11:5 そのとき【主】は、人間が建てた町と塔を見るために降りて来られた。①擬人法を用いて神の行動と思いを、風刺(皮肉)的に表現している。②神は人類の状態に関心を持っておられるが、人類は余りにも小さい存在。③いかに高い塔を建てたとしても、神は、それを見るために降りて来なければならない。④人が神の高みに届くことは不可能。そう考えること自体が傲慢である。

(2)神は、人類が悪事を企むのは、同一言語を話すからだと判断された。①塔を建てたのは反抗の始まりに過ぎない。②これを皮切りに、あらゆる種類反抗が起こってくるに違いない。③問題を解決するためには、ことばの混乱をもたらす必要がある。  ④そこで神は、地上にことばの混乱をもたらされた。
(3)ことばが通じなくなった人々は、言語グループごとに散らされて行った。  ①これが、多言語と多民族が誕生した経緯である。 ②「バベル」という名前の背後には、ことば遊びがある。③「散らす」という意味と「神の門」という意味がある。  ④さらに、「バラル(混乱させる)」ということばとも似ている。⑤「バベル」は、「神の門」が「混乱の門」になったことを示している。

まとめ

(1)この段階で、人類は誤った宗教を作り出した。(2)また、道徳的堕落も際限なく進むようになった(ロマ1:18~32参照)。(3)神の国に対する悪魔の攻撃が、効果を発揮しているかのように見え始めた。(4)神の対抗策は、アブラムの召しである。

アブラハム契約(7)について学ぶ。

大洪水後の人類の反抗


(1)アブラハム契約の内容
(2)アブラハム契約への攻撃
(3)アブラハム契約の継承
(4)アブラハム契約の歴史的進展

Ⅰ.アブラハム契約の内容

1.神は、新たな対抗策を用意した。

(1)バベルの塔事件で、人類の道徳的堕落は歯止めが効かない状態になった。 ①悪魔の国の力が、優勢になり始めたように見える。②しかし神は、新たな対抗策を用意しておられた。③それがアブラハム契約である。

(2)神の対抗策は、アブラハムの召しという形を取って現れた。①神は、アブラハムから新たな民族を作り出そうとされた。②地上の諸民族は堕落したので、新たな民族を産み出す必要性があった。③女の子孫(メシア)は、アブラハムの子孫から誕生する。④6章「バベルの塔」では、女の子孫はセムの家系から出ることを確認した。 ⑤アブラハムは、セムの家系に属する人物である。

2.アブラハムの召命は、契約の形を取ってやってきた。

(1)聖書の神は、契約を結ぶ神である。①私たちは、この神概念をユダヤ人から教わった。(2)創12:1~3Gen 12:1 【主】はアブラムに言われた。/「あなたは、あなたの土地、/あなたの親族、あなたの父の家を離れて、/わたしが示す地へ行きなさい。Gen 12:2 そうすれば、わたしはあなたを大いなる国民とし、/あなたを祝福し、/あなたの名を大いなるものとする。/あなたは祝福となりなさい。Gen 12:3 わたしは、あなたを祝福する者を祝福し、/あなたを呪う者をのろう。/地のすべての部族は、/あなたによって祝福される。」

(3)3つの条項と1つの付帯条項①アブラハムに土地が約束された。*遊牧民であった彼にとっては、夢のような約束である。②彼は大いなる国民となる。*これは、子孫の約束である。大いなる国民とはイスラエルの民を指す。③アブラハムは神の祝福を受ける。*彼の名は大いなるものとなる。    *地上のすべての民族がアブラハムを通して祝福される。*アブラハムの子孫からメシアが誕生することを約束したものである。④付帯条項が追加された。*「アブラハムを祝福する者を祝福し、呪う者をのろう」*この付帯条項は、悪魔の攻撃から契約の民を守るためのものである。*アブラハム契約は今も有効なので、この付帯条項も生きている。

3.アブラハムの選びは、神の国を確立するための方法としての選びである。

(1)神は、サタンによって破壊された「神の国」の回復のために、彼を召された。①アブラハムは、神の約束をそのまま信じ、カナンの地に向かった。  ②彼は、その地にどういう危険と特徴があるのかを知らないで、出て行った。

Ⅱ.アブラハム契約への攻撃

1.激しいききんがカナンの地を襲った。

(1)カナンの地に入った後、アブラハムの信仰が試された。

(2)彼は、ききんを逃れるためにエジプトに下る決心をする。①永住の意図はなく、一時的に寄留するだけという思いで行動を起こした。

2.予想外の事件が起こった。

(1)アブラハムは、異母妹であったサライを妹だと偽っていた。①エジプトの王ファラオが、サラを宮廷(ハーレム)に召し入れた。
(2)この事件は、悪魔が作り出したものである。  ①悪魔は、アブラハム契約を攻撃しているのである。②サラがパロに奪われたなら、子孫の約束は成就しないことになる。③これは、神の計画に対するサタンの挑戦である。

3.付帯条項が効力を発揮した。

(1)神は、パロとその家を災害で痛めつけた。①ユダヤ教の伝統では、この「災害」は重い皮膚病だとされている。②皮膚病のために、男女の交わりが不可能になったのである。③パロはアブラハムを殺さず、そのままエジプトから去らせた。④アブラハムは、以前よりも裕福になってカナンの地に戻って来た。⑤これでアブラハム契約は、子孫の約束の成就が可能な状態に戻った。

(2)アブラハムの失敗によってアブラハム契約が破棄されることはない。①アブラハム契約は、無条件契約である。

Ⅲ.アブラハム契約の継承

1.アブラハムからイサクへ、イサクからヤコブへ継承されて行く。

(1)イスラエルの神は「アブラハム、イサク、ヤコブの神」である。①これは、契約の神の御名である。②イサクに対する契約の継承は、創世記26章に出てくる。③ヤコブに対する契約の継承は、創世記28章に出てくる。

(2)契約の継承に際しては、神の自己宣言に続いて、アブラハム契約の3つの条項の再確認がなされる。①土地の約束②子孫の約束③祝福の約束

(3)族長たちは全員、異邦人の救いの約束を神から受けていた。①神は、イスラエルの選びを通して、全人類を救おうとされた。

Ⅳ.アブラハム契約の歴史的進展

1.カナン人との同化の危険性

(1)夫に先立たれた嫁のタマルは、しゅうとのユダを欺いて子を残す(創38章)。①ヤコブの息子たちの霊性(特にユダの霊性)は、極めて堕落していた。②ヤコブの一家がこのままカナンの地に留まり続けるのは、危険である。③カナン人と同化し、契約の民としての聖さも特徴も失ってしまう。

(2)神はヤコブの一家をエジプトに移住させ、一大民族として育てようとされた。①エジプト移住は、神からの裁きである。②と同時に、ヤコブの一家を守る恵みの手段でもある。③ヨセフが売られたのは、一家がエジプトに移住するための準備であった。

2.ゴシェンの地での生活

(1)契約の民は、ゴシェンの地でエジプト人から分離して一大民族として育った。①イスラエルの民は、この世(カナン人)と分離する必要があった。  ②分離のための分離ではなく、この世に出て行くための分離である。③彼らの最終ゴールは、カナンの地への帰還である。

(2)悪魔は、エジプトで拡大し続けるイスラエルの民を危険視し始めた。①彼は、「女の子孫」(メシア)はこの民から誕生することを知っていた。  ②そこで、エジプトの政治権力を用いて、イスラエルの民を抹殺しようとした。③イスラエルの民を抹殺することが、アブラハム契約を破壊する道である。*次回は、エジプトでの反ユダヤ主義の拡がりと、出エジプトの出来事について学ぶ。