(1)信仰による勝利

(2)悪魔の反撃

(3)レビ人の町々

(4)士師記のサイクル

1,士師記の時代に起きた
神の国と悪魔の国の葛藤について学ぶ。

Ⅰ.信仰による勝利

1.カナン入国に際しては、民に対する神の守りが顕著な形で現れた。

(1)ヨシュアのリーダーシップの証明

  ①民は、乾いた地を進むようにヨルダン川を渡ることができた。

    *川の水が上流でせき止められたからである。

  ②これは、民が紅海を渡ったことに対応している。

    *紅海の水が2つに割れた。

  ③紅海の奇跡では、モーセのリーダーシップが証明された。

  ④ヨルダン川の奇跡では、ヨシュアのリーダーシップが証明された。

(2)要塞の町エリコの征服

  ①エリコは、高い城壁を擁する町であった。

  ②思案していたヨシュアの前に、【主】の軍の将(受肉前のメシア)が現れた。

  ③抜き身の剣を持ったその人は、ヨシュアに命じた。

Jos 5:15
【主】の軍の将はヨシュアに言った。「あなたの足の履き物を脱げ。あなたの立っている所は聖なる場所である。」そこで、ヨシュアはそのようにした。

  ④民は、【主】の助けによってエリコを征服することができた(ヨシ6章)。

    *契約の箱を担ぎ、6日間町の周りを回った。

    *7日目には7周し、ときの声を上げた。

  ⑤この戦いは、【主】の戦いであった。

Ⅱ.悪魔の反撃

1.エリコを征服した直後に、悪魔の反撃が始まった。

(1)悪魔は、アカンを誘惑した。

Jos 6:17
この町とその中にあるすべてのものは【主】のために聖絶せよ。遊女ラハブと、その家にともにいる者たちだけは、みな生かしておけ。彼女は私たちが送った使いたちをかくまってくれたからだ。

Jos 6:18
あなたがたは聖絶の物には手を出すな。あなたがた自身が聖絶されないようにするため、すなわち、聖絶の物の一部を取ってイスラエルの宿営を聖絶の物とし、これにわざわいをもたらさないようにするためである。

Jos 6:19 ただし、銀や金、および青銅や鉄の器はすべて【主】のために聖別されたものである。それらは【主】の宝物倉に入れよ。」

  ①アカンは、この命令に背いた。その背後には、悪魔の誘惑があった。

(2)アカン個人の罪は、共同体全体の罪と見なされた。

  ①その結果、次のアイの戦いでは、イスラエルの民は敗北を喫した。

  ②悪魔は、アカンを起点に、不従順の罪が民全体に広がることを期待した。

  ④しかし神は、その可能性を初期の段階で阻止された。

  ⑤アカンとその一家は、石打の刑で処刑された。

2.悪魔は、ギブオン人たちを利用した。

(1)イスラエルの民は、ギブオン人と契約を結んだ。

  ①神は、カナン人を滅ぼすように命じておられた。

  ②ギブオン人は、遠国から来たかのように偽装し、イスラエルと契約を結んだ。

    *古びた袋、古いはきもの、古びた着物など

  ③民は、【主】にお伺いを立てることなしにギブオン人と契約を結んだ。

  ④偶像礼拝の民ギブオン人が、契約の民の間に住むことを許された。

Ⅲ.レビ人の町々

1.カナンの地は、12部族に分割された。

(1)カナンの地には未征服の地域や都市国家が残されていた。

  ①それらの地域を征服する責任は、各部族に委ねられた。

2.神は、48のレビ人の町々を国中に設置するように命じられた。

(1)レビ族の相続地は、【主】ご自身である。

  ①生活のために、レビ人の町々が設けられた。

  ②国中に配置されたレビ人たちは、民衆に律法を教えた。

  ③これは、霊的堕落からイスラエルの民を守るための神の方法である。

  ④かつてのレビ人の使命は、幕屋の維持と移動のための奉仕であった。

  ⑤定住生活に入ってからは、その使命の内容が大きく変化した。

Ⅳ.士師記のサイクル

1.ヨシュアの死後

(1)民は、悪魔の攻撃を受けやすい状態に置かれた。

  ①その結果、背教と無政府状態が約350年続くことになる。

Jdg 21:25 そのころ、イスラエルには王がなく、それぞれが自分の目に良いと見えることを行っていた。

  ②モーセの律法よりも、人間的な判断が優先されたということである。

2.悪魔は、3つの方法で神の計画に挑戦した。

(1)民は、カナンの地征服のための戦いを途中で放棄した。

  ①これは、将来に禍根を残した。

(2)民は、カナン人の宗教の影響を受けた。

  ①バアルとアシュタロテ礼拝を採用した。

(3)民は、カナン人と結婚するようになった。

Jdg 3:5 イスラエル人は、カナン人、ヒッタイト人、アモリ人、ペリジ人、ヒビ人、エブス人のただ中に住み、

Jdg 3:6 彼らの娘を自分たちの妻とし、また自分たちの娘を彼らの息子に与えて、彼らの神々に仕えた。

3.神と悪魔の葛藤は、士師記のサイクルとして現れた。

(1)民は、霊的、道徳的に堕落する。

  ①民は、バアル礼拝に取り込まれて行った。

  ②「バアル」とは、当時カナンの地で広く礼拝されていた豊穰神である。

  ③「バアル」には、主人という意味があるが、それが農業神の称号となった。

  ④バアルは、毎年一度死んで生き返ると考えられていた。

  ⑤バアルの復活を促進するために、神殿娼婦との交わりが実行された。

  ⑥遊牧生活しか知らなかった民にとって、バアル崇拝は大きな誘惑となった。

  ⑦「アシュタロテ」は、バアルの妻で、豊穰、戦争、愛を司る女神であった。

(2)民の堕落を止めるために、神の裁きが下る。

  ①神は、裁きの器として外敵を起こされた。

  ②外敵となったのは、イスラエルの民が追放しなかったカナン人たちである。

  ③悪魔は、背教が民全体に広がることを期待したが、そうはならなかった。

  ④その都度、神は介入された。

  ⑤そのため、士師記の時代の背教と堕落は、常にローカルな範囲にとどまった。

(3)民は、神に立ち返る。

  ①外敵の攻撃が激しくなると、民は悔い改め、神の助けを求めた。

Jdg 6:6 こうして、イスラエルはミディアン人の前で非常に弱くなった。すると、イスラエルの子らは【主】に叫び求めた。

  ②外敵の攻撃は、民を神のもとに連れ戻すための神の方法であった。

  ③民は、無条件にカナンの地を相続したのではない。

  ④その地の相続には、モーセの律法に従って生きるという責務が伴っていた。

  ⑤律法に忠実に生きるなら、その地にあって繁栄を経験することができる。

  ⑥しかし、律法から外れるなら、苦境に陥ることになる。

(4)神は、解放者を起こされる。

  ①民の祈りに応え、神は解放者を起こされた。

  ②この解放者が、士師と呼ばれる人たちである。

  ③士師は、ヘブル語で「ショフェット」、英語で「judge」「deliverer」である。

    *裁判官、政治的・軍事的指導者、外敵から民を救う解放者

  ④士師記には、12人の士師たちが登場する。

まとめ

1.神は、イスラエルの民がカナンの地で神の栄光を表わすことを期待された。

2.悪魔は、地域的な背教が民全体に拡がることを画策した。

3.神は、背教が民全体に広がらないように阻止された。

4.士師記のサイクルは、悪魔の陰謀がその都度阻止されたことを示している。

(1)民の霊的状態

(2)サムエルの登場

(3)王を求める声

(4)サウルの登場

士師記の時代から王制への移行について学ぶ。

Ⅰ.民の霊的状態

1.士師記の時代は、背教と混乱の時代であった。

(1)この状況に終止符を打つために、神はサムエルという器を用意された。

(2)士師記の時代は、預言者の時代に向かう移行期であった。

  ①モーセ・ヨシュアの時代は終わった。

  ②まだ預言者の時代が到来していなかった。

  ③1サム3:1b

1Sa 3:1b そのころ、【主】のことばはまれにしかなく、幻も示されなかった。

2.イスラエルの民の信仰は、風前の灯のように消えかかっていた。

(1)大祭司エリの目は、かすんできて、見えなくなっていた(1サム3:2b)。

  ①肉体の目とともに、霊的な目もかすんでいたことを表わしている。

  ②彼は、息子たちの暴走をくい止めることができなくなっていた。

(2)指導者がいない民は、滅びるしかない。

  ①この状況の中に神が介入された。

  ②サムエルは、イスラエルに霊的覚醒をもたらす神の器である。

Ⅱ.サムエルの登場

1.サムエルは、祭司と預言者という二重の召命を受けた。

(1)不妊の女であったハンナは、【主】に祈って息子を得た。

  ①彼女は、その息子をサムエルと名づけた(【主】は聞かれる)。

  ②彼女は、サムエルを【主】の働きのために献げた。

(2)少年サムエルは、【主】からの語りかけを受けた(1サム3:1~14)。

  ①彼は、大祭司エリの家の没落をそのまま預言した。

  ②これが、サムエルの奉仕の始まりであった。

  ③預言者は、神のことばをそのまま民に伝える。

2.大祭司エリが死に、サムエルが霊的指導者となった。

(1)ペリシテ人との戦いで、神の箱が奪われた。

  ①その知らせ受け、エリは首を折って死んだ(享年98歳)。

  ②神の箱が奪われたことで、イスラエルは国家存亡の危機に直面した。

  ③その後、契約の箱はペリシテの地からイスラエルの地に返還された。

  ④回り回って、キルヤテ・エアリムに20年間とどまることになる。

(2)成人したサムエルは、ミツパの集会において、イスラエルをさばいた。

  ①イスラエルの全家に向かって、偶像礼拝を悔い改めるように激しく迫った。

  ②民は直ちに、バアルやアシュタロテを除き去った。

  ③その結果、建国以来最大のリバイバル(宗教改革運動)が起こった。

(3)このリバイバルは、イスラエルに4つの祝福をもたらした。

  ①40年にわたるペリシテ人の支配が終わった。

  ②失っていた領土を取り返した。エクロンからガテに至る地域。

  ③ペリシテ人との戦いが止んだ。再開されるのは、サウルの時代に入ってから。

  ④アモリ人の間に平和が訪れた(東の国境地帯も平和になった)。

3.サムエルは、生涯現役を貫いた。

(1)1サム7:15

1Sa 7:15 サムエルは、一生の間、イスラエルをさばいた。

1Sa 7:16 彼は年ごとに、ベテル、ギルガル、ミツパを巡回し、これらすべての聖所でイスラエルをさばき、

1Sa 7:17 ラマに帰った。そこに自分の家があり、そこでイスラエルをさばいていたからである。彼はそこに【主】のために祭壇を築いた。

  ①ベテル、ギルガル、ミツパを巡回し士師としての務めを果たした。

  ②人々が難問題の解決を求めてやって来たとき、それに回答を与えた。

③これら3つの町に、「預言者のための学校(塾)」を設立した。

  ④巡回奉仕が終わると、ラマの家に帰り、そこでも士師としての任務を果した。

(2)70歳になった頃、2人の息子を士師に任命し、ベエル・シェバに派遣した。

  ①南部地方は息子たちに任せ、自分は北部地方だけをさばくことにした。

  ②しかし、それは失敗に終わった。

  ③息子たちは、父サムエルとは異なり、賄賂を取って裁きを曲げたのである。

  ④サムエルもまた大祭司エリと同じように、息子の養育に失敗した。

  ⑤ここに、サタンの妨害を見ることができる。

Ⅲ.王を求める声

1.12部族の長老たちが、王を与えて欲しいと要求した。

(1)民のこの要求は、悪魔の誘いによるものである。

2.悪魔は、それまでの経験を通して教訓を学んだ。

(1)士師たちの時代が続く限り、背教は地域的なものにとどまる。

  ①このままでは、全イスラエルを堕落させるのは不可能である。

(2)王政に移行すれば、王の堕落が全イスラエルの堕落につながる。

  ①当時、イスラエルの政治形態は神政政治であった。

  ②神が王で、神は預言者や士師を通して民に語りかけていた。

  ③しかし民は、それよりも人間の王に信頼を置く政治形態を求めた。

3.サムエルは、神の御心を求めた。

(1)サムエルは、不愉快になったが、【主】に祈ると、次のような答えあった。

  ①民の言う通りにせよ。

  ②彼らは、サムエルを退けたというよりは、神ご自身を退けたのである。

  ③これは新しいことではなく、民の歴史上いつも起こってきたことである。

  ④民を治める王の権利を民に知らせよ。

4.サムエルは、王政には犠牲が伴うことを民に説明した。

(1)サムエルの警告

  ①王は、息子たちを徴兵し、戦士として使役するようになる。

  ②王は、娘たちを取り、王宮で仕えさせるようになる。

  ③王は、新たに税を徴収し、民は重税で苦しむようになる。

  ④王は、奴隷や家畜の中から最上のものを取り、仕事をさせるようになる。

  ⑤それまで民が持っていた自由は、かなりの程度制限されるようになる。

(2)民は、その警告に耳を傾けず、他国民のようになりたいと王を求めた。

  ①ここでの民の罪とは、神を退け、人間の王に頼ろうとしたことにある。

  ②もう一つの罪は、神の時を無視して王を求めたことである。

Ⅳ.サウルの登場

1.神は、イスラエルに王が必要になることを予知し、人材を用意しておられた。

(1)それがダビデである。

  ①ダビデは若過ぎたので、サウルが王に選ばれることになった。

  ②神の時を待てない者は、必ず墓穴を掘るようになる。

2.イスラエルは、サウルを王とする王政(統一政府体制)に移行した。

(1)悪魔にとっては、一挙に契約の民を堕落させる好機が到来したことになる。

  ①これ以降悪魔は、サウルを標的として激しく攻めた。

3.即位して2年後、サウルは【主】に背き、誤った判断を下した。

(1)祭司にしか許されていないいけにえを、自らの手で献げた。

  ①サムエルからその罪を糾弾されると、自分を正当化する理屈を並べ立てた。

  ②神は、聖霊をサウルから取り去り、ダビデにお与えになった。

(2)それ以降サウルは、より激しい悪魔の攻撃にさらされることになる。

  ①1サム16:14

1Sa 16:14 さて、【主】の霊はサウルを離れ去り、【主】からの、わざわいの霊が彼をおびえさせた。

(3)サウルの性格は、異常なものに変質していった。

  ①常軌を逸した自己愛

  ②異常なほどの嫉妬心

  ③全的堕落

4.神は、ペリシテ人との戦いを用いて、この状況に介入された。

(1)サウルは、ギルボア山でのペリシテ人との戦いで戦死した。

  ①3人の息子(ヨナタン、アビナダブ、マルキ・シュア)も戦死した。

  ②ペリシテ人たちは、特にサウルとその息子たちを狙い撃ちにした。

(2)サウルが戦死したのを見て、イスラエル人たちは、町々を捨てて逃走した。

  ①その後にペリシテ人がやって来て、そこに住むようになった。

  ②イスラエルの人々が築いてきた町々が、敵の手に渡ったのである。

(3)まとめ

  ①王としてのサウルは、最初は素晴らしいスタートを切った。

  ②小さな不従順の積み重ねにより、【主】に反抗することが習慣になった。

  ③その背後にサタンの策略があった。

  ④神は、サウルと息子たちを戦死させることで、悪魔の策略を阻止された。

  ⑤次に神が立てる器は、ダビデである。

ダビデに対する悪魔の攻撃について学ぶ。

(1)王国の確立

(2)ダビデ契約

(3)悪魔の攻撃

(4)更なる悪魔の攻撃

Ⅰ.王国の確立

1.サウルに代わってダビデが王として立てられた。

(1)神の国と悪魔の国の葛藤において、ダビデは重要な役割を果たすことになる。

  ①悪魔は、ダビデを標的に激しい攻撃を仕掛けてくる。

(2)ダビデは、短時間の内に統一王国を確立した。

  ①サウルが戦死した後、12部族を統合した統一王国の王となった。

  ②エブス人の町であったエルサレムを征服し、そこを統一王国の首都とした。

  ③エルサレムは、政治的にも宗教的にも、イスラエルの中心地となった。

  ④仇敵ペリシテ人の脅威を完全に取り去った。

2.ダビデは、エルサレムで「神の家」を建設することを志した。

(1)しかし神は、ダビデが神殿を建設することをお許しにならなかった。

  ①ダビデが多くの人の血を流した戦士だったからである。

  ②神殿建設は、息子ソロモンに委ねられることになる。

3.この時点で神は、預言者ナタンを通して、ダビデと契約を結ぶと宣言された。

(1)その契約が、「ダビデ契約」と呼ばれるものである。

Ⅱ.ダビデ契約

1.ダビデ契約の内容(2サム7:4~17)

(1)2サム7:12~16

2Sa 7:12
あなたの日数が満ち、あなたが先祖とともに眠りにつくとき、わたしは、あなたの身から出る世継ぎの子をあなたの後に起こし、彼の王国を確立させる。

2Sa 7:13 彼はわたしの名のために一つの家を建て、わたしは彼の王国の王座をとこしえまでも堅く立てる。

2Sa 7:14 わたしは彼の父となり、彼はわたしの子となる。彼が不義を行ったときは、わたしは人の杖、人の子のむちをもって彼を懲らしめる。

2Sa 7:15 しかしわたしの恵みは、わたしが、あなたの前から取り除いたサウルからそれを取り去ったように、彼から取り去られることはない。

2Sa 7:16 あなたの家とあなたの王国は、あなたの前にとこしえまでも確かなものとなり、あなたの王座はとこしえまでも堅く立つ。』」

(2)契約条項

  ①ダビデは、【主】のために家(神殿)を建てようと企てたが、逆に【主】が、
ダビデのために一つの家(王朝)を造られる。

    *つまり、ダビデ王朝が誕生し、いつまでも継続するということである。

  ②ダビデの身から出る世継ぎの子が、ダビデの死後、王国を確立する。

    *世継ぎの子とは、ソロモンのことである。

  ③そのソロモンが、【主】のために神殿を建てるようになる。

  ④その王国の王座は、永遠に続く。

  ⑤しかし、もしソロモンが罪を犯すなら、【主】は彼を懲らしめる。

  ⑥サウルのときのようにソロモンから恵みが取り去られることはない。

    *これは、契約に基づく神の愛、無条件の愛である。

(3)永遠に続く3つのことがらが約束された。

  ①ダビデの家(王朝)

  ②ダビデの王国

  ③ダビデの王座

2.ダビデ契約は、悪魔に向けられた神の宣言である。

(1)「イスラエルは永遠に滅びることはない」という神の宣言である。

  ①ダビデの子孫は、歴史の終わりまで途絶えることなく続く。

  ②終わりの時代に御国(千年王国)が確立される時、ダビデの子孫である人物
がダビデの王座に着いて統治するようになる。

(2)後の時代に登場する預言者たちは、救い主はダビデの家系から誕生し、ダビ
デ契約の内容は「ダビデの子」において成就すると預言するようになる。

  ①ダビデ契約は、神の国と悪魔の国の葛藤において、決定的な意味を持つ。

3.神の宣言を聞いた悪魔は、当然次の手を考えた。

(1)神の計画を阻止する方法は、ダビデの家系を破壊することである。

  ①これ以降、悪魔の計画はそのことを軸に進んで行く。

Ⅲ.悪魔の攻撃

1.神はダビデを大いに祝福された。

(1)ダビデは、イスラエルの黄金時代を築くことができた。

  ①ダビデの指揮下にあって、イスラエルは勝利に次ぐ勝利を経験した。

2.すべてが順調に進んでいると思われた時に、悪魔が攻撃を仕掛けて来た。

(1)ダビデの家系を破壊することが、悪魔の最終ゴールである。

  ①そのためには、ダビデを攻撃するところから始めるのが一番である。

  ②悪魔はダビデの弱点を突いた。

  ③悪魔の誘惑に乗ったダビデは、姦淫と殺人の罪を犯した。

    *2サム11章に出て来るバテ・シェバ事件

  ④その結果、ダビデの霊的、肉体的状態は、破滅寸前まで追い込まれた。

3.彼は、【主】の前で心を注ぎ出して悔い改めの祈りを捧げ、赦しを乞うた。

(1)詩篇51篇は、後世に残る悔い改めの詩である。

  ①神は、ダビデの罪を赦された。

(2)罪は赦されても、罪の結果は残る。

  ①神は、ダビデと民に教訓を学ばせるために、多くの苦難をもたらされた。

  ②姦淫の結果誕生した子は、【主】に打たれて病気になり、死んだ。

(3)ダビデの絶頂期は、2サム12章をもって終わる。

  ①13章以降、ダビデの生涯は、坂道を転がり落ちるように下降して行く。

  ②次にダビデを襲うのが、家庭内での近親相姦と兄弟殺しの悲劇である。

  ③息子のアブシャロムが、長子アムノンを殺害する。

  ④アブシャロムは、父ダビデに対して謀反を起こし、王位を奪おうとする。

  ⑤その結果、ダビデは都落ちに追い込まれる。

    *敵は、「彼に神の救いはない」と罵倒する。

  ⑥これらいっさいが、罪を矯正するための神からの訓練であった。

Ⅳ.更なる悪魔の攻撃

1.悪魔の攻撃は、今度は人口調査という形を取ってやってきた。

(1)ダビデが人口調査(兵力の調査)を行った動機は、力を誇るためであった。

  ①彼は、神よりも自らの力に頼ろうとしたのである。

(2)人口調査をする場合は、贖い金を納める必要があった(出30:12)。

  ①ダビデは、その律法に不従順であった。

  ②神は、傲慢の罪のゆえに、ダビデとイスラエルの民を裁かれた。

  ③これもまた、彼らの過ちを矯正するための裁きである。

(3)ダビデは、ただちに悔い改めの祈りを神に献げた。

  ①神は、先見者ガドを通して3つの罰を示し、その中からひとつを選択するよ
うにダビデに伝えた。

  ②1歴21:12

1Ch 21:12
三年間の飢饉か。三か月間、あなたが敵の前で攻めたてられ、敵の剣があなたに追い迫ることか。三日間、【主】の剣、疫病がこの地に及び、【主】の使いがイスラエルの国中を荒らすことか。』今、私を遣わされた方に何と答えたらよいかを決めなさい。」

  ③ダビデは、3番目の罰を選んだ。

    *人の手に陥るよりは、【主】の御手に陥る方がよいと判断した。

2.神は、悪魔の策略を粉砕された。

(1)【主】は疫病を下されたので、7万人が倒れた(1歴21:14)。

  ①ここでの神の裁きは厳しすぎると感じる方がいるに違いない。

(2)人口調査を行った罪は、「高慢(プライド)の罪」である。

  ①それは、サタンの堕落の原因となった罪である。

  ②ダビデは、自分が所有する兵力を誇ったのである。

  ③神は、彼の高慢を砕くために、原因となっているものを取り去られた。

(3)【主】は、力の源はご自身であることを、ダビデとイスラエルの民に教えた。

  ①またしても、悪魔の策略は失敗に終わった。

ソロモンに対する悪魔の攻撃について学ぶ。

(1)王国の黄金時代

(2)ソロモンの罪

(3)王国の分裂

Ⅰ.王国の黄金時代

  
1.イスラエルは、ソロモンの治世下において黄金期を迎えた。

(1)その治世の始まりに、ソロモンは、自分の祝福ではなく知恵を求めた。

  ①神はそれを喜ばれ、知恵だけでなく、富と誉れも与えると約束された。

  ②統一王国が黄金期を迎えた理由は、神がソロモンに与えた「知恵」にある。

2.ソロモンが達成した偉業のひとつが、神殿の建設である。

(1)神殿が完成し、契約の箱が至聖所に納められた時、神殿に雲が満ちた。

  ①この雲は、【主】の臨在を表すシャカイナグローリーである。

  ②神はソロモンの神殿を受け入れ、そこに臨在することをよしとされた。

  ③2歴5:13~14

2Ch 5:13
ラッパを吹き鳴らす者たち、歌い手たちが、まるで一人のように一致して歌声を響かせ、【主】を賛美し、ほめたたえた。そして、ラッパとシンバルと様々な楽器を奏でて声をあげ、「主はまことにいつくしみ深い。その恵みはとこしえまで」と【主】に向かって賛美した。そのとき、雲がその宮、すなわち【主】の宮に満ちた。

2Ch 5:14 祭司たちは、その雲のために、立って仕えることができなかった。【主】の栄光が神の宮に満ちたからである。

  ④モーセが幕屋を完成させた時も、同じ現象が起こっていた(出40:34〜35)。

(2)神は、神殿奉献の祈りへの答えとして、ソロモンを祝福すると約束された。

  ①ダビデのように忠実に歩むなら、ダビデに約束されたことが成就する。

  ②その約束とは、ダビデ王朝の継続である。

(3)と同時に、警告のことばも語られた。

  ①もしソロモンとイスラエルの民が偶像礼拝に走るなら、神の裁きが下る。

  ②裁きには2つのものがある。

    *イスラエルの民はカナンの地を追われ、捕囚に引かれて行く。

    *神殿は神から見捨てられ、民は諸国民の物笑いとなる(1列9:1~9)。

Ⅱ.ソロモンの罪

1.悪魔は、王となったソロモンを集中的に攻撃した。

(1)悪魔の狙いは、民が堕落することと、ダビデの家系が途絶えることである。

  ①「王が堕落すれば、民も堕落する」というのが、悪魔の基本戦略である。

  ②悪魔の誘惑に乗ったソロモンは、数々の重罪を犯すようなる。

2.軍事力の増強

(1)1列10:26

1Ki 10:26 ソロモンは戦車と騎兵を集め、戦車千四百台と騎兵一万二千人を所有した。彼はこれらを戦車の町々、およびエルサレムの王のもとに配置した。

  ①当時、戦車は最強の武器であった。

  ②ソロモンは、戦車を1,400台、騎兵を12,000人確保した。

  ③「戦車の町々」とは、北からハツォル、メギド、ゲゼルのことである。

  ④しかし、戦車を大量に保持することは、律法違反であった。

(2)申17:16

Deu 17:16
ただし王は、決して自分のために馬を増やしてはならない。馬を増やすために民をエジプトに戻らせてはならない。【主】は「二度とこの道を戻ってはならない」とあなたがたに言われた。

  ①富を蓄えたり、戦車を増やしたりするのは、御心に反することである。

  ②目に見えるものに信頼を置き、神を無視するようになるからである。

  ③神以外のものに信頼を置くなら、信仰の危機が訪れる。

3.外国の女たちとの結婚

(1)1列11:1~3

1Ki 11:1
ソロモン王は、ファラオの娘のほかに多くの異国人の女、すなわちモアブ人の女、アンモン人の女、エドム人の女、シドン人の女、ヒッタイト人の女を愛した。

1Ki 11:2
この女たちは、【主】がかつてイスラエル人に、「あなたがたは彼らの中に入ってはならない。彼らをあなたがたの中に入れてもいけない。さもないと、彼らは必ずあなたがたの心を転じて彼らの神々に従わせる」と言われた、その国々の者であった。しかし、ソロモンは彼女たちを愛して離れなかった。

1Ki 11:3 彼には、七百人の王妃としての妻と、三百人の側女がいた。その妻たちが彼の心を転じた。

  ①申17:17は、多くの妻を持つことを禁じている。

  ②ソロモンのハーレムには、妻が700人、そばめが300人囲われていた。

  ③その女たちが、ソロモンの心を【主】から偶像神に向けさせた。

(2)晩年のソロモンは、父ダビデの心からはかけ離れて行った。

  ①とは言え、【主】への信仰を捨てたわけではなかった。

  ②【主】以外に、妻たちがもたらした偶像神をも礼拝するようになった。

(3)ソロモンが礼拝した偶像神とは、次のようなものである。

  ①アシュタロテ(シドン人の豊穣と性の女神。礼拝は淫乱なものであった)

  ②ミルコム(アンモン人の神。子どもをいけにえとすることで悪名高い)

    *レビ18:21は、名指しでミルコムを警戒するように命じている。

  ③モアブ人の偶像神ケモシュとアモン人の偶像神モレク(ミルコムの別名)

    *ケモシュとモレクのために、オリーブ山の上に高き所(祭壇)を築いた。

4.ソロモンの失敗の原因

(1)自分もまた他国の王たちと同じように振る舞おうとした点にある。

  ①ソロモンの偉大さは、【主】から与えられたものであった。

  ②【主】から離れ、自らの使命を忘れたとき、ソロモンは背教の王になった。

  ③その結果、神殿が存在していることの意味が希薄となった。

  ④さらに、霊的混乱が民の間に広がった。

  ⑤この状況を一番喜んだのが悪魔であることは、言うまでもない。

Ⅲ.王国の分裂

1.ソロモンの死後、統一王国は南北に分裂する。

(1)これは、ソロモンの罪に対する裁きであるが、それだけではない。

  ①神は、偶像礼拝の震源地であるユダから北の10部族を切り離された。

  ②また、ダビデの家系の人たちに、偶像礼拝の愚かさを教えようとされた。

(2)この目的のために用いられたのが、ヤロブアムである。

  ①アヒヤは、外套を12切れに引き裂き、10切れを取れとヤロブアムに命じた。

  ②ヤロブアムが北の10部族の王となるということの絵画的表現である。

(3)王国が完全に滅びない理由は、ダビデ契約にある。

  ①1列11:32

1Ki 11:32
ただし、ソロモンには一つの部族だけ残る。それは、わたしのしもべダビデと、わたしがイスラエルの全部族の中から選んだ都、エルサレムに免じてのことである。

  ②「一つの部族だけが」というのは、ユダ族のことである。

  ③ベニヤミン族は弱小部族。ユダ族と合わせて一つの部族と見なされた。

  ③王国は、ダビデ契約のゆえに、小規模になっても生存し続ける。

  ④そこから、約束のメシアが誕生する。

2.ヤロブアムの台頭

(1)ある時点で、ソロモンはヤロブアムを殺そうとした。

  ①ソロモンの殺意の背後に、悪魔の策略が見え隠れする。

  ②ヤロブアムが死ねば、ソロモンから10部族を取り去る計画は挫折する。

(2)ヤロブアムはエジプトに亡命し、ソロモンが死ぬまでそこに滞在した。

  ①当時のエジプトの王は、シシャクであった(後にユダに侵入する)。

  ②エジプト滞在は、ヤロブアムに悪影響をもたらした。

  ③この時期に彼は、「金の子牛」を神とするアイデアを思いついたのであろう。

(3)ソロモンが死ぬと、その子レハブアムが王となった。

  ①戴冠式の最中に、北の10部族が新王に対して直訴に及んだ。

  ②そのスポークスマンになったのが、ヤロブアムである。

  ③彼はエジプトにいたが、エフライム族の代表たちによって呼び戻された。

  ④ヤロブアムは、2つのことを要請した。

    *重税を軽減してほしい。

    *強制労働を軽くしてほしい。

  ⑤ソロモンの時代、王国の維持のために、民は過剰な負担を強いられていた。

  ⑥この要請は、北の10部族の総意であり、当然のことであった。

(4)レハブアムは、愚かな王であった。

  ①ヤロブアムの要請を受け入れるようにという長老たちの助言を退けた。

  ②自分に仕えている若者たちの意見を尊重した。

  ③若者たちは、ソロモン時代以上に厳しく統治すべきであると助言した。

  ④彼は、知恵ある助言よりも、自分が聞きたいと思っている助言に耳を傾けた。

  ⑤かくして、ソロモンの統一王国は、イスラエルとユダに分裂した。

  ⑥南北分裂は、偶然の出来事ではない。

  ⑦悪魔の策略に対抗するために、【主】が導かれたことであった。

(5)イスラエルの歴史は、北王国の崩壊、南王国の崩壊へと進んでいく。

5,北王国の崩壊について学ぶ。

1)ヤロブアムの罪

(2)最悪の王アハブ

(3)悪魔の使いイゼベル

(4)アッシリア捕囚

Ⅰ.ヤロブアムの罪

1.ソロモンの後継者レハブアムは、愚かな決断によって王国の分裂をもたらした。

(1)統一王国は、イスラエル(北王国)とユダ(南王国)に分裂した。

(2)この時から南北朝時代に突入する。

2.神はヤロブアムに、北王国の確立を約束しておられた(1列11:31、37〜38参照)。

(1)ダビデのように【主】の命令を守るなら、彼の王国は祝されるはずであった。

  ①しかし彼は、不信仰に堕ちて行った。

  ②神に背を向けたとたんに、彼の心は恐れで満たされた。

  ③神を信頼しない者は、恐れに支配されるようになる。

  ④サタンはその恐れを利用した。

3.ヤロブアムが考えた国防策

(1)民がエルサレムに上らないような仕組みを造った。

  ①エルサレムへの巡礼を許可したなら、民の心はユダになびくようになる。

  ②ダン(北の国境の町)とベテル(南の国境の町)に金の子牛の像を置いた。

  ③1列12:28~29

1Ki 12:28
そこで王は相談して金の子牛を二つ造り、彼らに言った。「もうエルサレムに上る必要はない。イスラエルよ。ここに、あなたをエジプトから連れ上った、あなたの神々がおられる。」

1Ki 12:29 それから彼は一つをベテルに据え、もう一つをダンに置いた。

  ④これは、ヤハウェ礼拝に別の要素を付加したものである。

  ⑤ここには、エジプトの影響が見受けられる。

  ⑥ヤロブアムにはエジプト亡命の経験があった(1列11:40)。

(2)また彼は、祭司を新しく任命した。

  ①その結果、レビ族でない部族の者が、祭司職に就くようになった。

(3)さらに、例祭の規定を変更した。

  ①仮庵の祭りをひと月遅れで祝うようにした。

  ②かくして、北の10部族と南の2部族は、宗教的にも対立するようになった。

4.ユダとイスラエルの信仰形態の比較

(1)ユダの信仰の特徴

  ①神をかたどった像はない。

  ②レビ系祭司のみ認められる。

  ③神殿はエルサレムにのみある。

  ④唯一神信仰が保持される。

(2)イスラエルの信仰の特徴

  ①金の子牛を崇拝する。

  ②レビ族以外の者も祭司となる。

  ③神殿はダンとベテルにある。

  ④混合宗教の要素が強くなる。

Ⅱ.最悪の王アハブ

1.イスラエルの偶像礼拝は、ユダよりも激しいものであった。

(1)イスラエルでは、約210年の間に、9王朝が興亡を繰り返す。

  ①その9王朝から19人の王が出現するが、善王はひとりも出て来ない。

  ②その中で、最悪の王はアハブである。

  ③彼はシドンの王女イゼベルと結婚し、バアル礼拝を国内にもたらした。

  ④悪魔は、神の民の半分(イスラエル)を破壊しようとしたのである。

(2)アハブは、父オムリが建設したサマリアを首都として、22年間統治した。

  ①父オムリは、それまでに登場した王の中では最悪であった。

  ②息子のアハブは、それよりもさらに邪悪な王であった。

  ③1列16:29~31

1Ki 16:29
オムリの子アハブは、ユダの王アサの第三十八年に、イスラエルの王となった。オムリの子アハブはサマリアで二十二年間、イスラエルの王であった。

1Ki 16:30 オムリの子アハブは、彼以前のだれよりも【主】の目に悪であることを行った。

1Ki 16:31
彼にとっては、ネバテの子ヤロブアムの罪のうちを歩むことは軽いことであった。それどころか彼は、シドン人の王エテバアルの娘イゼベルを妻とし、行ってバアルに仕え、それを拝んだ。

  ④彼の罪は、偶像礼拝を国中に広げたことである。

  ⑤しかし彼は、それ重大な罪だとは思わず、「軽いこと」と考えていた。

  ⑥彼は、シドン人の王エテバアルの娘イゼベルを妻に迎えた。

  ⑦これは、強制された結婚ではなく、自発的なものであった。

  ⑧それゆえ、この結婚の責任は、アハブにある。

2.イゼベルとともに、バアル礼拝がイスラエルに侵入してきた。

(1)バアル(主という意味)礼拝の内容

  ①バアルとは、イスラエルの地で礼拝されていた男神の総称である。

  ②礼拝形態にはさまざまなものがあった。

  ③シドン人(フェニキア人)のバアル礼拝も、その変種の一つである。

(2)神の対抗策は、預言者エリヤとエリシャの派遣である。

  ①彼らの時代は、出エジプト時代に続いて奇蹟が起こった時代となる。

  ②彼らのメッセージは、悔い改めと申命記の律法への立ち返りである。

  ③この時期、「イスラエルの残れる者」という概念が誕生した(1列19:18)。

Ⅲ.悪魔の使いイゼベル

1.権力欲に満ちた妻が、意志薄弱な夫を支配するという関係ができた。

(1)北王国にバアル礼拝が広がった最大の原因は、イゼベルにある。

  ①イゼベルは、多くの【主】の預言者たちを平気で殺した。

2.北王国の危急に際して、神は預言者エリヤを遣わされた。

(1)エリヤという名は、「ヤハウェは私の神」という意味である。

  ①真の神はヤハウェなのかバアルなのかという戦いが始められた。

  ②これは、雨を降らせるのはヤハウェなのかバアルなのかという戦いである、

(2)カルメル山頂で、1人対450人の預言者たちの戦いが繰り広げられた。

  ①この人数差に驚く必要はない。

  ②聖書には、多数派が真理を保持したという例はない。

  ③どの時代においても、信仰のあるイスラエル人は、少数派であった。

  ④バアルの預言者たちは、朝から午後3時まで叫び、最後は、剣や槍で自らの

肉体を切り裂いて血を流すまで騒ぎ立てたが、天からなんの応答もなかった。

  ⑤エリヤが祈ると、神はお答えになった。

  ⑥天から火が降り、全焼のささげ物、たきぎ、石、ちりを焼き尽くした。

  ⑦これによって、【主】の勝利が確定した。

  ⑧ようやく民は、【主】だけが真の神であることを認識した。

3.しかしイゼベルは、敗北を認めなかった。

(1)彼女は、24時間以内にエリヤを殺すと宣言した。

  ①彼女には、それほどの権力が備わっていた。

(2)エリヤは、イゼベルについての預言を語った。

  ①1列21:23~24

1Ki 21:23 また、イゼベルについても【主】はこう言われる。『犬がイズレエルの領地でイゼベルを食らう。

1Ki 21:24 アハブに属する者で、町で死ぬ者は犬がこれを食らい、野で死ぬ者は空の鳥がこれを食らう。』」

  ②この預言は、2列9:30〜10:28で成就した。

  ③神に敵対したイゼベルの最期は、実に悲惨なものであった。

Ⅳ.アッシリア捕囚

1.【主】はイスラエルに警告を発するために、しもべたち(預言者)を何度も送られた。

(1)預言者たちは、モーセの律法を説いて、悪の道からの悔い改めを民に迫った。

  ①しかし民は、なおも悪にとどまり続けた。

  ②滅びは突如襲ってきたのではない。

  ③彼らには何度も悔い改めの機会が与えられた。

  ④彼らが預言者たちの警告を無視し続けたため、滅びが彼らを襲った。

  ⑤彼らは、【主】が禁止されたカナン人の風習を採用して堕落して行った。

  ⑥そこで【主】は、激しく怒り、彼らを御前から取り除かれた。

  ⑦つまり、約束の地から追放されたということである。

  ⑧それがアッシリア捕囚である。

(2)この悲惨な出来事は、神がご自分の民を見捨てたということではない。

  ①これは、民に対する矯正的裁きである。

  ②また、悪魔の策略への対抗策でもある。

(3)かくしてユダだけが残されることになった。

  ①やがてユダも、イスラエルと同じ運命をたどることになる。

6,南王国の崩壊について学ぶ。


(1)サタンの手先アタルヤ

(2)名君ヒゼキヤ

(3)悪王マナセ

(4)バビロンの王ネブカデネザル

Ⅰ.サタンの手先アタルヤ

1.ユダには19人の王と1人の女王が出現した。

(1)19人の王はダビデの家系から出たが、女王アタルヤだけがそうではなかった。

  ①19人の王の中で8人が名君(善王)である。

  ②サタンはメシアの出現を妨害するために、南王国の破壊を画策した。

  ③神は、名君を立てることによって、サタンの策略を阻止された。

(2)名君たちがいたので、南王国は北王国よりも長く継続することになる。

  ①しかし、南王国の民には偶像礼拝に傾斜していく傾向があった。

  ②最終的には、バビロンによって滅ぼされることになる。

  ③バビロンは、イスラエルの民を裁くために立てられた神の器でイスラエルの民を裁くために立てられた神の器である。

2.アタルヤは、聖書に登場する女性の中で、最も邪悪である。(2列11、2歴22~23)。

(1)父は北王国の王アハブ、母はフェニキア(シドン)の王女イゼベルである。

  ①南王国の王ヨラム(ヨシャパテの長男)の妻となり、数人の子を儲けた。

(2)アタルヤの息子たちは、ペリシテ人とアラビア人の攻撃を受けて殺される。

  ①末子アハズヤ(別名エホアハズ)だけが助かった(2歴21:17)。

  ②アハズヤは王となるが、エフーによって暗殺された(2列9:27〜29)。

  ③エフーは残虐な人物であるが、堕落した王たちを裁くための「神の道具」と

しての役割を忠実に果たした。

(3)アタルヤは、それを自分が南王国の女王になるための機会と捉えた。

  ①彼女は、王の一族(自分の孫たち)をすべて抹殺することにした。

  ②この行為は、神の計画に対する挑戦であった。

  ③神は、ダビデの子孫が南王国の王位を継承すると約束しておられた。

  ④もしダビデの血統が途絶えたなら、ダビデの子孫からメシアが誕生すると

いう神の計画は挫折する。

  ⑤つまり、アタルヤの背後でサタンが暗躍していたということである。

3.神は、サタンの策略を阻止された。

(1)孫たちの中から、末子ヨアシュ(わずか1歳)が救い出された。

  ①幼子は、アハズヤの姉妹のエホシェバによって救い出され、神殿に匿われた。

  ②まさに、「首の皮ひとつでつながった」とはこのことである。

  ③この幼子によって、ダビデの家系は守られた。

(2)7年後、大祭司エホヤダが、幼子ヨアシュを王として擁立するために動いた。

  ①エホヤダは、忠実な臣下たちを神殿に呼び寄せ、王位奪還の計画を開示した。

  ②彼らは、女王アタルヤを王宮まで連行して処刑した。

  ③かくして、ダビデの血統を抹殺しようとするサタンの計画は、阻止された。

Ⅱ.名君ヒゼキヤ

1.南王国が北王国よりも長く続いた理由

(1)善王の存在と彼らがもたらした何度かのリバイバル(信仰復興)

  ①その中で最大のものは、ヒゼキヤ王の下で起こったリバイバルである。

(2)ヒゼキヤは、北王国が滅びたときの南王国の王である。

  ①2列18:5

2Ki 18:5 彼はイスラエルの神、【主】に信頼していた。彼の後にも前にも、ユダの王たちの中で、彼ほどの者はだれもいなかった。

(3)彼は、晩年になって棄教するのではなく、最後まで律法を守り続けた。

  ①それゆえ【主】は、彼を祝福された。

  ②彼の信仰は、以下のような行動となって表れた。

    *神殿の修理と再建(2歴29:3〜36)

    *過越の祭りや他のイスラエルの祭りの実行(2歴30:1〜27)

    *種々の宗教改革(2歴31:2〜21)

(4)【主】は、ヒゼキヤの信仰を祝福し、彼に勝利をお与えになった。

  ①アッシリアのセナケリブがエルサレムに攻め上り、脅迫文を送って来たとき、ヒゼキヤは神殿に上り、それを【主】の前に広げて祈った。

  ②その夜、ユダの山地に宿営していたアッシリア軍の兵士たち18万5,000人が、【主】の使いによって打たれた。

  ③その後、セナケリブはニネベに帰還し、しばらくそこに住んだが、ニクロスの宮で礼拝していたとき、ふたりの息子がやって来て、彼を暗殺した。

  ④アッシリアの神ニクロスは、セナケリブを救うことができなかった。

  ⑤かくして、南王国を滅ぼそうとするサタンの策略は、再び無に帰した。

Ⅲ.悪王マナセ

1.何度か起こったリバイバルによって、南王国の民の霊性は高められた。

(1)それでも、偶像礼拝への傾斜が止むことはなかった。

  ①神は、その都度預言者たちを遣わされた。

  ②しかし、南王国が偶像礼拝の罪から離れることはなかった。

2.南王国で最悪の王は、マナセである。

(1)マナセは、12歳で(前697年)父ヒゼキヤとの共同統治を開始した。

  ①合計55年間王位にあった。

  ②2列21:2

2Ki 21:2 彼は、【主】がイスラエルの子らの前から追い払われた異邦の民の忌み嫌うべき慣わしをまねて、【主】の目に悪であることを行った。

(2)彼は、善王であった父ヒゼキヤの道ではなく、祖父アハズの悪の道に歩んだ。

  ①彼の悪行をリストアップすると、以下のようになる。

    *ヒゼキヤが破壊した高き所(偶像礼拝の場)を再建した。

    *バアルの祭壇を立てた。

    *アシェラ像(淫乱な像であろう)を作った。

    *アッシリアの天体礼拝を導入した。

    *【主】の宮に天体礼拝のための祭壇を築いた。

    *自分の子どものひとりをいけにえとして献げた。

    *卜占、まじない、霊媒や口寄せなどを行った。

  ②彼は、モーセの律法も、【主】が先祖たちに与えた約束も無視し、軽蔑した。③マナセが民を迷わせたので、民は誤った道を歩むようになり、最後は、かつてのカナン人たちよりも堕落した状態に陥った。

(3)彼の治世は、南北王朝のどの王よりも長く続いたが、その記述は短い。

  ①霊的視点から、特記すべき事項がほとんどなかったということである。

(4)マナセ、アモンと悪王が続いたが、次に登場したのが、名君ヨシヤである。

  ①彼はわずか8歳で王となり、31年間王座に就いた。

  ②彼の治世下で、ユダは平和、繁栄、改革を経験した。

  ③しかし、ヨシヤによるリバイバルも、南王国を救う力にはならなかった。

Ⅳ.バビロンの王ネブカデネザル

1.北王国を滅ぼしたのは、アッシリアであった。

(1)背教の民を裁くという役割を終えたアッシリアは、表舞台から退場する。

2.次に、裁きの器として立てられたのは、バビロンである。

(1)前597年、バビロン軍はエルサレムに侵攻し、神殿を略奪した。

  ①ユダヤ人の政治的、文化的指導者たちは、バビロンに連行された。

(2)その中には、預言者エゼキエルもいた。

  ①彼は、バビロン滞在中に非常に重要な幻を見せられた。

  ②神殿からシャカイナグローリーが去るという幻であった(エゼ8~11)。

  ③これは、神の守りが南王国から取り去られるということを意味していた。

  ④この預言の成就が、前586年のエルサレムの町と神殿の崩壊である。

  ⑤南王国は、約350年の歴史を終えた。

3.聖なる神は、北王国と南王国の罪を厳しく裁かれた。

(1)その結果が、アッシリア捕囚とバビロン捕囚である。

4.しかし神は、契約の民が全滅することをお許しにならなかった。

(1)少数の信仰者の群れ(イスラエルの残れる者)が残された。

(2)神の裁きは、神の民の霊性を矯正するためのものであった。

  ①神は、イスラエルの残れる者の中からメシアが出るように歴史を導かれた。

  ②神の国と悪魔の国の戦いは、まだまだ続く。

  ③次回は、バビロン捕囚の時代を取り上げる。

7,バビロン捕囚について学ぶ。

(1)ネブカドネツァルの傲慢

(2)バビロンの滅亡

(3)捕囚からの帰還

(4)神殿建設

Ⅰ.ネブカドネツァルの傲慢

1.金の像の礼拝

(1)ネブカドネツァルは、征服された民に金の像を礼拝するように要求する。

  ①悪魔は、ユダヤ人を再び偶像礼拝に巻き込もうとしていたのである。

  ②ユダヤ人が偶像礼拝で滅亡すれば、メシアが誕生する可能性はなくなる。

  ③ネブカドネツァルは、悪魔の手先になったわけである。

(2)金の像の奉献式に、政府の高官や諸州の高官が召集された。

  ①そこに、ダニエルの3人の友人も列席していた。

    *シャデラク、メシャク、アベデ・ネゴ

  ②金の像のそばに火の燃える炉が設置された。

  ③金の像を拝まない者は、その炉の中に投げ込まれると告知された。

2.3人のユダヤ人青年の信仰

(1)ユダヤ人にとっては生死を分ける重大な問題である。

  ①3人のユダヤ人青年は、像を拝むことを拒否した。

  ②王は、金の像を拝むのを拒むなら、炉の中に投げ込むと脅しをかけた。

  ③「どの神が、私の手からおまえたちを救い出せるだろうか」と豪語した。

  ④王には、エルサレムの神殿を略奪したことからくる自信があった。

  ⑤この発言の背後に、サタンの傲慢を見ることができる。

  ⑥かつてアッシリアのセンナケリブも、同じように豪語したことがあった。

    *2列18:32~35

    *傲慢な支配者は、やがて辱めに遭う。

(2)ダニエルの3人の友人たちは、信仰の道を選んだ。

  ①「私たちが仕える神は、火の燃える炉から私たちを救い出すことができます」

  ②死ぬことが御心なら、自分たちはそれに服するつもりである。

  ③王は炉を7倍熱くせよと命じ、3人を衣服を着たまま炉の中に投げ込んだ。

3.神の介入

(1)炉の外にいた人たちは焼き殺され、炉の中に落ちた人たちは生き続けた。

  ①そればかりか、第4の者が炉の中に姿を現した。

  ②王は、「第4の者の姿は神々の子のようだ」と叫んだ。

    *これは、天使のようだという意味である。

(2)深く感銘を受けた王は、ユダヤ人の神を敬い、3人に報賞を与えた。

  ①かくして、サタンの策略は水泡に帰した。

Ⅱ.バビロンの滅亡

1.バビロンの役割

(1)神がバビロンに与えた役割は、イスラエルの民の罪を裁くことであった。

  ①その役割を終えたバビロンは、メド・ペルシアに取って代わられる。

2.バビロン滅亡の経緯

(1)大宴会

  ①ネブカドネツァルの孫ベルシャツァルは、大宴会を催した。

  ②祖父ネブカドネツァルは、エルサレムの神殿から金と銀の器を奪ってきた。

  ③ベルシャツァルは、それらの聖なる器を宴会に用いた。

    *ここにも、傲慢の罪が見られる。

(2)突然、壁から人間の手の指が現れ、壁に何かを書き始めた。

  ①それを見た王は、深い恐怖に襲われた。

  ②王母は、その意味の解き明かしができる人物としてダニエルを推薦した。

  ③当時ダニエルは80歳前後で、政府の要職からは退いていたようである。

  ④彼は、偶像礼拝に染まったベルシャツァルを糾弾し、神の裁きを宣告した。

(3)ダニ5:25~28

Dan 5:25 その書かれた文字はこうです。『メネ、メネ、テケル、ウ・パルシン。』

Dan 5:26 そのことばの意味はこうです。『メネ』とは、神があなたの治世を数えて終わらせたということです。

Dan 5:27 『テケル』とは、あなたが秤で量られて、目方の足りないことが分かったということです。

Dan 5:28 『パルシン』とは、あなたの国が分割され、メディアとペルシアに与えられるということです。」

(4)その夜、バビロンはペルシア軍による夜襲を受けて崩壊した。

  ①ベルシャツァルは殺された。

  ②かくして、バビロンは神の前から排除された。

    *神の計画は完全で、狂いがない。

    *神に信頼を置く人は、幸いである。

Ⅲ.捕囚からの帰還

1.神の裁きの期間が終わった。

(1)捕囚は、偶像礼拝に陥ったイスラエルの民の上に下った神の裁きであった。

  ①70年が満ちたとき、神は再び契約の民に回復の機会を提供された。

(2)エレミヤは、バビロン捕囚は70年で終わると預言していた(エレ29:10)。

  ①これは、【主】がペルシアのキュロス王の霊を奮い立たせたことにより成就。

  ②神は、支配者の心を奮い立たせたり、変えたりすることがおできなる。

  ③イザ44:28

Isa 44:28
キュロスについては『彼はわたしの牧者。/わたしの望むことをすべて成し遂げる』と言う。/エルサレムについては『再建される。/神殿はその基が据えられる』と言う。」

2.キュロス王は、イスラエルの民の祖国帰還と神殿建設を許可した。

(1)彼は、政治的決断を下した。

  ①帝国の周辺に傀儡諸国を配置し、防衛力を高めるという目的(前538年)。

(2)祖国に帰還したユダヤ人の数は、合計5万人弱であった。

  ①恐らく、捕囚民全体の1割か2割程度であろう。

  ②過半数のユダヤ人が、生活の安定を求めて捕囚の地に留まったのである。

  ③帰還した人々は、レムナント(イスラエルの残れる者、真の信仰者)である。

Ⅳ.神殿建設

1.エルサレムに着いたユダヤ人たちは、早速、神殿建設に着手した。

(1)神殿建設の重要性

  ①神殿は、信仰を安定させるためにどうしても必要なものであった。

  ②神殿再建は、神の御心に叶ったことであった。

2.ここで悪魔は、再建工事を妨害するために動いた。

(1)サタンが用いた器は、「ユダとベニヤミンの敵たち」(サマリア人)である。

  ①サマリア人は、北王国崩壊以降にその地に住み着いた混血民の子孫たち。

    *2列17:23~24

(2)彼らは、2つの方法で工事を妨害しようとした。

  ①工事に協力するという申し出をし、指導者たちをかく乱する。

  ②それがうまく行かない場合は、脅迫する。

    *サタンの策略は、常に巧妙なものである。

    *何が正論なのか、真実を見抜く目が必要とされる。

3.イスラエルの政治的リーダーと宗教的リーダーの活躍

(1)ゼルバベルとヨシュア

  ①彼らは、毅然とした態度で、ただちにその申し出を拒否した。

  ②敵に付け入る隙を与えないためである。

(2)申し出を断る理由が2つある。

  ①自分たちは、イスラエルの神のために宮を建てようとしている。

    *サマリア人が礼拝している神とイスラエルの神は、同じ神ではない。

  ②宮の建設計画は、キュロス王が自分たちに命じたものである。

    *それゆえ、神殿は自分たちだけで完成させる。

4.サマリア人の反撃

(1)申し出を拒否されたサマリア人は、反撃に出た。

  ①脅迫とペルシア帝国内での宮廷工作

  ②ユダヤ人たちに絶望感を与えようとした。

   ③そのため、神殿建設の工事は、一時中断した。

  ④ユダヤ人の敵が一時的に勝利したかのように見える状況が訪れた。

5.2人の預言者

(1)神は、ハガイとゼカリヤという2人の預言者をお立てになった。

  ①彼らの役割は、民を教え、励ますことであった。

(2)工事停滞の原因は、2つあった。

  ①外的要因(サマリア人の妨害)

  ②内的要因(民の怠惰)

(3)ハガイは、民の怠惰が問題であると指摘した。

  ①民は、神殿よりも自分の生活を建て直すことに熱心であった。

(4)ゼカリヤは、神殿建設は【主】から出たことであると語った。

  ①異邦人の王は、そのために用いられているに過ぎない。

  ②工事の完成は、【主】の霊によると預言した。

  ③ゼカ4:6

Zec 4:6
彼は私にこう答えた。/「これは、ゼルバベルへの【主】のことばだ。/『権力によらず、能力によらず、/わたしの霊によって』/と万軍の【主】は言われる。

    *彼とは天使、私とはゼカリヤ。

6.神殿の工事の再開

(1)神殿がなければ、シナイ契約の内容を実行することができない。

  ①そのため、2人の預言者は、神殿建設を最優先課題としたのである。

(2)政治的リーダーはゼルバベル、宗教的リーダーはヨシュア。

  ①彼らは、2人の預言者が語る神のことばに励まされて、工事を再開した。

(3)中断していた工事は14年後に再開され、神殿は前515年に完成した。

  ①神が2人の預言者を送り、ユダヤ人たちを励ましたからである。

  ②またもや、サタンの策略は神によって粉砕されたのである。

ペルシア時代における神の国と悪魔の国の葛藤について学ぶ。

(1)ペルシア帝国内の反ユダヤ的出来事

  ①エステルとモルデカイ

  ②反ユダヤ主義者ハマン

  ③神の介入

(2)帰還した地での反ユダヤ的出来事

  ①エズラ

  ②3人の預言者

Ⅰ.ペルシア帝国内の反ユダヤ的出来事

1.エステルとモルデカイ

(1)バビロンからペルシアへの移行

  ①前586年、多くのユダヤ人が強制的にバビロンに移住させられた。

  ②後になって、バビロンはペルシアに滅ぼされる。

  ③ペルシアのキュロス王が、ユダヤ人の帰還許可の勅令を出した(前539年)。

  ④しかし、多くのユダヤ人がそのまま捕囚の地(ペルシア帝国)にとどまった。

(2)クセルクセス

  ①ダリヨスの後を継いだのは、クセルクセス(別名アハシュエロス)である。

  ②クセルクセスの時代には、多くのユダヤ人がペルシア帝国に住んでいた。

  ③クセルクセスは、妃を選ぶために、未婚の娘たちをスサの後宮に集めた。

  ④その中に、エステル(星という意味)というユダヤ人の娘がいた。

(3)エステル

  ①両親を亡くした彼女は、モルデカイの養女となっていた。

  ②モルデカイは、エルサレムから捕え移されてきた捕囚民の子孫である。

    *2列24:10〜16(バビロン捕囚の様子)

    *モルデカイは、信仰熱心な人であった。

  ③王宮に着いたエステルは、ただちに監督官であるヘガイの好意を得た。

    *神の御名は出てこないが、神の摂理の御手は伸ばされていた。

  ④やがてエステルは、王の好意を受けて王妃となる。

  ⑤神の摂理の御手の前例

    *エジプトの獄中にいたヨセフは、監獄の長の好意を得た(創39:21)。

    *バビロンにいたダニエルは、宦官の長の好意を得た(ダニ1:9)。

(4)モルデカイ

  ①当時モルデカイは、何らかの官職に就いていたようである。

  ②彼は偶然にも、2人の宦官による王の暗殺計画を耳にする。

  ③彼はそれを、エステルを通して王に伝えた。

  ④この事件は、王の年代記の書に書き残されたが、王はそれを忘れてしまった。

  ⑤後にそれを思い出した王は、モルデカイに報賞を与えることになる。

    *このことの背後にも、神の摂理の御手がある。

    *神の御手は、神のタイミングで伸ばされる。

2.反ユダヤ主義者ハマン

(1)アガグ人ハメダタの子ハマン

  ①ハマンは、王によって高い地位に登用された。

  ②彼はアマレク人の子孫であり、筋金入りの反ユダヤ主義者であった。

(2)ハマンの横暴

  ①王の家来たちはみな、ハマンの前にひれ伏した。

  ②モルデカイだけは、それを拒否した。

    *彼は、離散の地にあっても異文化に同化しなかった。

    *彼は、自らの文化や宗教を守り続けた。

  ③激怒したハマンは、ユダヤ民族全体を根絶やしにしようと決心した。

  ④悪魔は、ハマンを道具として用いて、ユダヤ人を抹殺しようとしたのである。

(3)ハマンのユダヤ人抹殺計画

  ①ハマンは、古代オリエントの習慣に従ってくじを引いた。

  ②ユダヤ人抹殺計画を実行する時期を決めるためである。

  ③最初の月(1月)にくじを引いたが、くじは最後の月(12月)に当たった。

  ④ユダヤ人たちにとっては、約1年間の猶予が与えられたということである。

  ⑤人はくじを引くが、それを決めるのは、神である。

3.神の介入

(1)モルデカイは、エステルに執りなしを要請した。

  ①民族の運命が、彼女の執りなしにかかっていると伝えた。

  ②王の前に出ての執りなしは、命懸けである。

(2)エステルに伝えられたモルデカイのことば(エス4:14)

Est 4:14
もし、あなたがこのようなときに沈黙を守るなら、別のところから助けと救いがユダヤ人のために起こるだろう。しかし、あなたも、あなたの父の家も滅びるだろう。あなたがこの王国に来たのは、もしかすると、このような時のためかもしれない。」

  ①エステルも、ユダヤ人虐殺法の対象であり、例外ではない。

  ②今行動しないなら、神は別の人物を立てるであろう。

  ③エステルに与えられた立場は、この時のために与えられたものである。

(3)エステルの信仰のことば(エス4:16)

Est 4:16
「行って、スサにいるユダヤ人をみな集め、私のために断食してください。三日三晩、食べたり飲んだりしないようにしてください。私も私の侍女たちも、同じように断食します。そのようにしたうえで、法令に背くことですが、私は王のところへ参ります。私は、死ななければならないのでしたら死にます」

  ①これは、最善をなさる神への信頼のことばである。

  ②彼女の執りなしが功を奏し、事態は急展開を見せる。

  ③王の命で、ハマンは柱にかけられた。

    *この柱は、モルデカイを殺すために用意しておいたものである。

    *ハマンは、自らが蒔いた種の刈り取りをした。

  ④ユダヤ人たちは祝宴を開いた。

  ⑤この祝宴は、プル(くじ)にちなんでプリム(プルの複数形)と呼ばれた。

  ⑥彼らは、民族の記憶として、神の恵みの御業を覚えておこうとしたのである。

  ⑦かくして、悪魔のユダヤ人抹殺計画は阻止された。

Ⅱ.帰還した地での反ユダヤ的出来事

1.エズラ

(1)帰還民を導いたのは、律法学者エズラである。

  ①帰還の目的は、先祖たちの信仰の道(律法に従う道)を歩むためである。

  ②しかし、彼らの心には古い罪の性質が残っていた。

  ③それを示すある事件が持ち上がった。

(2)異教徒との雑婚

  ①長老たちが、民の「雑婚」の罪について、エズラに報告した。

  ②エズラは、この時代の宗教改革の指導者であった。

  ③神殿での清めの儀式は、行いが間違っているならなんの意味もない。

    *ホセ6:6、ミカ6:6〜8参照

  ④モーセの律法は、雑婚を禁じている。

    *出34:11〜16、申7:1〜4参照

  ⑤この命令は宗教的なものであって、人種差別ではない。

    *周辺の民族はすべてイスラエル人と同じセム系である。

    *異民族との結婚が偶像礼拝をもたらすことは、歴史が証明している

    *最大の失敗例は、ソロモンである(1列11:3〜5)。

  ⑥聖なる民(分離)として生きるようにとの命令は、無視された。

  ⑦その背後には、悪魔の巧妙な誘惑があった。

  ⑧異教徒の妻をめとった者は、次第に妻の宗教を受け入れるようになる。

  ⑨その結果、偶像礼拝をイスラエルの民の中に持ち込むことになる。

  ⑩民の内面が根本から変わらない限り、偶像礼拝の問題は存在し続ける。

(3)雑婚の問題の解決策

  ①エズラは【主】の前に涙の祈りを献げ、民に勧告のことばを語った。

  ②民は、大雨の中で罪を告白し、悔い改めを行動(異邦人妻の離縁)で示した。

  ③雑婚を通して偶像礼拝を広めようとしたサタンの策略は、破壊された。

(4)エズラの功績

  ①神殿の再建

  ②イスラエルの民の霊性の再建

    *民の霊性の再建のために必要とされたのは、悔い改めである。

    *ここに、私たちへの希望がある。

    *どんな人でも、悔い改めを通して神に立ち返ることができる。

2.3人の預言者たち

(1)預言者の分類

  ①捕囚期前預言書は、12ある。

  ②捕囚期預言書は、2つある。

    *エゼキエル書とダニエル書がそれである。

  ③捕囚期後預言書は、3つある。

    *ハガイ書、ゼカリヤ書、マラキ書がそれである。

(2)ハガイ、ゼカリヤ、マラキ

  ①帰還民に、神は3人の預言者たちを送り、励ましのメッセージを語らせた。

  ②預言者たちは、民の信仰を鼓舞し、御国の希望を語った。

  ③彼らは、悪魔の攻撃に対抗するために神が遣わした神のしもべたちである。

  ④旧約聖書の最後の預言者は、マラキである。

  ⑤それ以降、約400年にわたって神の沈黙の時が来る。

  ⑥これを「中間時代」と言う。

  ⑦神は沈黙されたが、働きを停止されたわけではない。

  ⑧それどころか、メシア到来の舞台を準備しておられた。

  ⑨次回は、「中間時代」について学ぶことにする。